用語集

【日本地帯】

66年前の6月、本州の大半に電力を供給していた国立第一発電所が謎の大爆発によって機能を無期限停止した。それから、夜が夜として君臨する6年間があり、人口の4割が命を落とし、日本人の遺伝子には深い恐怖が植え付けられたのだった。この大事件を僕たちは"暗黒時代"と呪っていた。

政府は生活に必要な要素はあらゆる施設に小さく分けられ、一つが壊れてもなんとかなると言う体制を取った。想像もつかないかもしれないが、こうして本州の都市は縮小化し、田舎は開拓され、古き良きは切り捨てられ。今やどこへ行っても大差のない景色だ。

徐々に復興しつつあると報道されていても、僕たちはそれを信じられないし、実際にはこの国は衰退していっている。

【ドゥーム】

常識的な都市伝説が蔓延っている。ドゥームと呼ばれる生きた災害が本州を蹂躙しているのだ、と。

魔法のような化学、科学者たちが秘密裏に研究していた生体兵器、今や残虐な事件のほとんどはそのドゥームのせいだろう、と言われている。6年間の暗黒時代にあった恐怖の発端は確かにこれらのせいだった、きっと間違っていないはずだ。この正体不明の不幸によって日本人は無造作に死んでいく。

誰もが知っていると言うのに、ドゥームの名前を口にすればドゥームを呼ぶのだと怖がられ、滑稽なことに対策もままならない状態である。人間の考える対策でどうにかなるものでもないだろうけれども。

【魔法使い】

ドゥームが認識され始めたと同時期に魔法使いの存在が浮上していたことも、忘れてはいけない。その名の通り魔法の力で脅威を薙ぎ払い、嵐と共に去っていった者たちだ。

一つ特筆すべきはその赤赤い髪で、人間の流れた血や大禍時の空の光、甘く実った生命の力、象徴的な意味を持つ色をしていると言うことだ。古くから西洋で忌み嫌われたと言うその髪は人成らざるとされ、僕たち人間とは別の叡智と文明を持って進化したと言われている。

何故そこにいるのかと問われると君が助けを求めたからと答える。ドゥームの発生を感じ取って集まってきた救世主だと喜ぶ人もいる一方で、彼女たちの存在がドゥームのいる理由なのではないかと言う人もいる。

【魔法】

原因と結果、過去と未来、偶然と必然、全ての中立に位置する原理こそが魔法の本質である。

魔法を掛けるとは暗示すること、強い想いが理想を引き寄せて現実に作用すること、僕たちが目標を達成するまでの過程は全て成就のための儀式であり、かくあれかしと思わせるものは現実に起ころうと近付いてくる、事象は僕たちに努力を強いていて、この相互作用が魔法を起こしているのだ。

【妄想魔法】

日本地帯にやってきた赤い髪の魔法使いは、自らに理想があるわけではない。目に見える超常現象を起こすために可憐な少女の姿に変身しなければならないし、その少女の姿は人間の理想でなければならない。

願われることに特化していて、願いを叶える力があると言うのが魔法使いにとっての基準である。この魔法を使ったとき、魔法使いの姿は願った人が思う憧れの女性になっている。人間の瞳はいつだって解釈する双眼鏡だ、信じた異世界を覗き込み、それをよく発見するためにある。

【魔法少女】

さて、魔法使いが使う妄想魔法は、少女と言う理想を叶えているのである。理想とは結果である。結果とは存在するものである。

魔法少女たちは存在していて、ドゥームを打ち払いたいと強く願っているということになるのだが、ともすればこの連続した災害を解決した先に、少女たちは待っているのだ。遥か何処かで。